自然原理主義とは・補足

(2002/3/10)
自然原理主義
 これは私が勝手に作った言葉です。もちろん今話題の「イスラム原理主義」から思いつきました。そのこと以外両者には何の関連もないのですが、アメリカが主導する経済至上主義・大量消費社会に異を唱えている点では共通点があるかもしれません。「自然中心主義」とか「自然第一主義」でも意味は同じだろうって? 確かにその通りです。でもそれでは、人々が「何なんだ?」と注目してくれそうな、「怪しい感じ」がありません。

基本思想
 「本来自然の一部である人間は、その基本に戻り、自然とともに生きるべきである」、ちょっと硬い表現ですが、「大好きな自然をこれ以上壊さないでくれーっ!」という私の素直な気持ちを、素直でなく表したものです。要するに、「自然とともに、自然に暮らそう」という、じつにシンプルなことです。

その陰で、貴重な生物が減少
 貴重な自然が次々に消滅していくのは、人々が自然に関心を持ち続けていないからです。それには、価値観が自然から離れてしまったことと、自然に親しむ時間的・精神的余裕が無くなっていることの二面があります。
 バブル経済のとき多くの自然がお金に換えられてしまいました。バブルがはじけ、人々は物とお金が生み出す幸福のはかなさに気づいたはずなのに、自然への回帰は十分とはいえません。身近にいくらでもあった自然が失われてしまったため、自然に接する機会が減りました。とくに子供たちは自然の中で遊ぶ楽しさを十分知ることなく成長します。自然に関心を持てといっても無理な話です。
 急速に進んでいる経済のグローバル化も、人々の関心を自然からそらしている要因のひとつです。経済的生存競争の激化が、人々から時間的・精神的余裕を奪っています。グローバル化は悪いことではないはずですが、物とお金にこだわる価値観が変わらないため競争が激化して、世の中の変化がどんどん速くなっています。たとえば現在は情報技術が発達して人と人とのコミュニケーションが飛躍的にスピードアップしましたが、そのことが生活のゆとりを生むのに使われず、世の中の変化をいっそう加速させて人々から余裕を奪っているのです。

経済至上主義には明らかに問題がある
 アメリカを始め多くの国の政治家は、経済が発展し続けないと国民は幸せになれないと主張しています。経済発展を優先して、かけがえのない自然を切り崩しているのです。その国民の多くもそう思っているようで、大量消費社会の中で精神的に余裕のない生活を送り、一喜一憂して暮らしています。人々が頑張るのは幸せになりたいからですが、はたしてそうなったのでしょうか。自然を見つめる余裕もなく生活し、その結果(無意識であるにしても)自然を消耗させておいて、最後は自然の中でゆったり暮らしたいなどというのは矛盾しています。
 自然とともに生きるためには、(おもに時間的な)ゆとりがなければなりません。経済や技術などの社会変化のスピードは、あくまでも、豊かな自然が保たれ、人々がその自然に関心を持ち続けられる程度に抑えられるべきなのです。最優先すべきは経済発展ではなく、人間にとっても基盤である自然です。自然を消耗させない経済システムを作る必要があります。そうでない経済システムは、ごく一部の人しか幸せにできません。

自分自身の生存までをも危うくする
 私は「人類ガン細胞説」を唱えています。地球をひとつの生命体と見なす考え方があります。各生物は地球生命体を構成する細胞で、水や空気は血液やリンパ液に相当します。そして健康な生命体では、細胞が秩序ある発生と消滅を繰り返します。そういう観点からすると、急速かつ無秩序な増殖を続けている人類は、まさに突然変異で生まれたガン細胞といえます。母体が持ちこたえられなくなるまで増殖を続け、自分も滅びるのです。
 私は地球と人類の将来についてかなり悲観的です。ただ、ガン細胞の一人としては、このまま黙って破局を迎えたくはありません。なんとか母体と我々自身が生き延びる道がないかと思うのですが。

自分たちが行なうことの結果を正確に見通せるほどには優れていない
 科学者や技術者、そして企業家の中には、人類がまもなく生物を作り出せるようになるとか、地球に住めなくなったら他の星に移住すればよいなどと主張する人がいます。
 近年の科学技術の進歩を見ていると、ついその気になるのかもしれません。しかしながら、この大規模かつ精妙な地球生態系を作り出すことが人類にできないことは明らかです。たとえ生物を作り出すことができるようになったとしても、実際に作られるのは、お金になる生物と、失敗で生まれてしまった有害な生物、そして悪意による恐怖の生物だけでしょう。
 最近では、他の生物がいない単純な人工環境の方を好む人も増えているようです。そういう人は他の星に人工の自然環境を作って生活できるのかもしれません。私には考えられないことです。そういう人には、地球の自然を壊す前に、今すぐ地球から出て行ってほしいと思います。

発達した知脳を生かす道
 「幸せは自然とともにある」というのが、「自然原理主義」の考えです。お金で買える幸せはごく短期的なものにすぎません。それに対して、自然から得られる幸せは根源的なものです。人間には変化がないと幸せを感じないという性質があり、そのことが人間の知識や技術、そして経済を発展させてきたのは事実です。その能力を自然を壊すのに使わずに、自然と共存できる技術の開発や、自然を守る努力に使うことは可能なはずです。自然を壊して得た名誉よりも、自然を守って得る名誉のほうが長期的には値打があります。


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